パパラギ東京店 ブログ

いよいよラストスパートです。
金曜日の薮崎は最終回。
もうホントに書くより言った方が早い。行った方がさらに早い笑

前回からオニヒトデの話をしています。
今日は親しみをもってオニちゃんと呼んでみましょう。

 

【オニちゃんのライフスタイル】

オニちゃんの大きさは平均30cmで大きなもので60cm程になります。
大好物のサンゴの隙間に体を折りたたんでひっそり暮らしています。
身体中トゲだらけの毒まみれ、おかげで友達はいません。ずーっと自粛生活なんですね。

賑やかな場所は苦手で、普段はちょっと深めの水深にひっそりと暮らしています。
ところがオニちゃんたちにもハメを外すパーティーナイトがやってきます。
年に一度、6〜7月は産卵シーズン。
普段は顔を合わせない仲間たちが大集合し、子孫を残します。
一年の鬱憤を晴らすように、1匹のオニちゃんからなんと数百万から一千万個の卵を生みます。
生まれてすぐは海面付近を浮遊して、新天地を目指し、いい感じのサンゴ礁に着底するとヒトデ生活の始まり。
大人になるまで約2年。寿命は7〜8年と言われます。

オニちゃんが大人になる頃には、数百万〜一千万といた兄弟は2〜3匹になっています。
オニちゃんの幼体を食べる生物は海にはたくさん。住処であるサンゴもオニちゃんの幼体を食べるんです。
こんな目にあったら身体中トゲで覆いたくなるものです。
きっとオニちゃんにとって浅瀬のサンゴ礁はトラウマの場所なんでしょう。
だから半年以上食事をしなくたって大丈夫。食事したって成長の早いサンゴを食べてすぐに痕跡を消そうとします。

オニちゃんにとってサンゴは、隠れ家であり餌場である。
サンゴにとってオニちゃんは、自分の餌であり、大きくなると成長の早いやかましいサンゴを間引いてくれる。
切っても切れない間柄なんですね。

 

【オニちゃんとサンゴの関係】

沖縄科学技術大学院大学(OIST)とオーストラリアの研究者でつくる国際研究チームによると、沖縄本島本部町とグレートバリアリーフのオニちゃんは同じ起源を持つことが分かったそう。
ちなみに、琉球列島のサンゴとグレートバリアリーフの起源が同じことも遺伝子レベルで解明されています。
科学的にもそのズブズブの間柄は証明されています。

きっとコーラルトライアングルからセットで南北へ吹き出すように広がっているんでしょうね。

蛇足ですが、これらのサンゴと本州のサンゴは別物なんだそう。本州のサンゴはどちらかというと台湾とかに近いそうです。
てっきり本州のも沖縄方面から黒潮に乗って運ばれているのかと思いきや、意外や意外、実はその逆で黒潮はサンゴの起源を南北で分断する壁のような存在だったのです。
本州の海水浴場にオニちゃんがいないのは黒潮のおかげかも。今度あったらお礼言っとこ。

コーラルトライアングルに起源を持つサンゴ礁かどうかは、遺伝子なんて見なくてもオニちゃんが一緒にいるかどうかで判別できちゃうのかも知れませんね。

 

【大量発生のナゼ】

大量発生→即・駆除。色んな立場の人が色んな解釈をします。
人の意見には色が付きがちですから、今回はオニちゃん視点で覗いてみましょう。

オニちゃんの大量発生が問題視されるのは、サンゴを見境なく食べ尽くしてしまうから。
オニちゃんの陰気な生活から、オラオラの要素はどこから出てくるのでしょう?
半年以上食べなくてもへっちゃらなオニちゃんですが、どうやらそれ以上飢餓状態が伸びるとオラオラスイッチが入ってしまうようです。
オニちゃんも食べるものがなくて困っているんですね。
増えたくて増えてるんじゃなくて、オニちゃんも増えすぎて困っているようです。

増えたく無いのに増えるのはナゼ?
調べていくと、増える力が増しているというより、減らす力が弱まったと考えた方が良さそうです。

国立研究開発法人水産研究・教育機構西海区水産研究所と国立大学法人宮崎大学の発表によると、オニちゃんは海中を浮遊する幼生期に特定の場所で通常の50倍の密度で分布することが分かりました。幼生がそのまま着底して大量発生の引き金となっている可能性があるそうです。

このタイミングで減る方向への力が加わらなくなった事が、大量発生の原因では無いでしょうか?
海流の変化?
海水攪拌が起きにくい気象がつづくようになった?
サンゴや魚類など子オニの捕食者の減少?
そして幼体の生存に有利な栄養塩の増加?
どうなんでしょうね。

次世代のオニ退治の話も少し。
オニちゃんが生殖シーズンに集まる習性から誘引物質と思われるタンパク質の候補を実験から特定し、これらをコミュニケーションに使っている可能性があることを行動追跡により確認したそうです。
要はそのタンパク質を頼りに、オニちゃんのパーティーナイトを現行犯で摘発し、文字どおり根絶やしにする事だって可能になるという事。

 

【自然が持つ安全装置】

自然の変化を察知すると人間は自然を調節しようとします。オニ退治もその一例ですね。
ですが自然はすごい。
人間がやり遂げようとしたことを簡単にひっくり返してしまいます。
子オニが減りにくくなったのは、海の環境が一因なのは間違いありません。
海がダメなら空が働きかけます。風台風の多い夏は海水が攪拌され、オニちゃんの個体が減るそうです。

また、オニ退治に奔走した2年後には大規模な白化現象が起き、石西礁湖の9割のサンゴが白化したと言われました。
オニちゃんがほったらかしでウヨウヨいても餓死していたでしょうね。
さあ今度は白化をなんとかしなければと奔走します。

2016年の白化現象から立ち直れないグレートバリアリーフ。人間があれやこれや策を講じているのを尻目に、自然が一発かまします。
2019年8月のニュースです。
オーストラリアの東に位置するトンガ近くの海底で大規模な噴火が発生し大量の軽石の漂流が海を覆い尽くします。NASAの衛星写真によると、マンハッタンにに匹敵する面積だそう。マンハッタンがどのくらいの大きさだか知りませんが笑

これがグレートバリアリーフに漂着して、軽石が様々な生物に覆われることでサンゴの回復の一助になるのではと言われています。
当時の記事で半年から一年で漂着するとの見込みでした。今頃グレートバリアリーフは軽石まみれかも知れませんね。

すごいアイデアですよね。自然はやることが大胆!
宇宙のことより海の方が分かってないなんて言うくらいですから、人間の想像力では及ばないことがたくさん起こりますね。

 

こういう自然がグッと腰を入れてきた瞬間に踏み込めるかどうか。
そんなことはカメラを持っていなかったら思いもしなかったことでしょう。
それも前のめりにしてくれるカメラであって良かったと。
オニちゃんの大量発生だって興味がわかなかったかも知れません。綺麗なものではありませんからね。

南伊豆で岩の上に落っことしても
宮古島でコケてカメラで受け身をとっても
波打ち際でタイムラプスしてちょっと一眠りしてたらカメラがサーフィンしていたこともありました。
それでもケロッとしてます。
もっと攻め込もうぜ!って言ってくれるのがNikonのカメラなのです。
海の最前線を知るダイバーにはNikonが似合うと思うな〜。
Nikonが似合う写真を撮っていたいな〜。

 

皆さんもダイバー活動を再開したら前のめりに行きましょ〜。