パパラギ休業もようやく最終コーナーが見えてきました。
ブログリレー金曜日の薮崎、ゴールテープに向かって再び2部作で駆け抜けまーす。
最終的にはカメラ自慢に落ち着きます。お付き合いください。
【カメラ小僧、オニに会う】
7年前、ツアー開催前の調査で訪れた宮古島で、内臓がギュンとなる出来事がありました。
やっぱり自分の目で見ないとダメだなあと。
「オニヒトデ」
宮本くんの「毒を科学する」にも登場した、強力な毒を持つヒトデです。
「とても美しいサンゴ礁が広がるビーチですが、オニヒトデが隠れていることがあります。気をつけてください」
当時は、ガイドさんのブリーフィングを聞いてもピンときていなかったのが正直なところ。
へ〜、毛虫みたいなものかなと。
なので実際、海で遭遇した時の印象は強烈でした。
こいつは多分とってもきっとヤバい感じ…
ガイドさんに紹介された訳でもないし、初めましてでしたが、間違いなくこれがオニヒトデだと。
強面で損してるタイプの生物ですね。
「うわー、おっかねー」
感想以上。
初めてラフレシアを見た人と同じ感じでしょうか。
そんなひよっこダイビングインストラクターの薮崎に、翌日ひょんな巡り合わせが。
「明日、オニヒトデの駆除をやるからよかったら見に来る?」
2013年、オニヒトデの食害に喘ぐ八重山諸島の海。「保全」の最前線を撮影できることとなったのです。
Nikonの一眼レフと買ったばかりのピカピカのハウジング。なんだか面白そうなものは何でも撮りたいお年頃。
誘われたらのこのこついて行ってしまいます。
・毒が強くて、亡くなった人もいる
・大量発生してサンゴを食べ尽くしてしまう
という知識だけ。浅い。浅はか。
行ってみたら驚きの光景でした。
めちゃくちゃいる!
しかもここは水深は2〜3mの海水浴場です。
何も知らずに観光客が海に入れば大変なことになる。
なんておぞましい光景なんだ。
ザクッ、ザッ、ザッ。ザクッ。ザクッ。
水中で何かを砕く音が響きます。あちこちで。
オニヒトデを駆除する音です。耳に残る嫌な音です。
単純な鉄パイプの切れっ端でオニヒトデの中心をくり抜く。次から次へ。
「間引く程度じゃダメ。徹底的に駆除する。ゼロになるまでやり続ける」
「お前幾つやった?」、「60くらいかな?」、「俺は70はやったな」
あれ?おぞましいと感じる対象が変わってきたぞ?
鬼はどっちか。
恐ろしいのはヒトデかヒトか。
大量発生したオニヒトデによる被害を直接受けていない、よそ者の薮崎はそんなことを感じていました。
実際に活動されている人の、その海を守りたいという想いも、覚悟も知りませんでしたから。
他にやり方はないのか?
陸に上がってからたくさん質問をしました。
実は、沖縄県のオニヒトデとの戦いは50年前から苦戦をしていたそう。
その度に美しいサンゴ礁は失われ、大きな傷跡が語り継がれるように。
50年戦って鉄パイプなの?
【人にも棘皮動物にも色々あったのよ】
理由:1 一度大量発生したら間引く程度ではダメ
間引きでは、大量発生の期間を伸ばすだけで被害を抑える事はできない。
本来、成長の早い種類のサンゴを好んで食べるオニヒトデだが、大量発生し飢餓状態になると見境なく食べるようになる。
理由:2 行政の援護が遅すぎる
海は広い。人海戦術で駆除をしようとしてもボランティアで集まる人数では限界がある。行政の援助を受けるには駆除したオニヒトデの個体数が分からないといけない。陸揚げして数える手間があり、手が追いつかない。
理由:3 結局少人数の機動力を活かして徹底的に殺すのが一番
最終的に、動ける人数で効率的に多く駆除しようとしたら鉄パイプでくり抜くのが一番合理的だそう。一日で一人100匹以上駆除する日もあるのだそう。
そういえば、東北で藻場の再生活動をしている人の話も面白かったなあ。
大量発生をしたウニを駆除する必要がある。行政が介入すると、殺すのは忍びないから個体数の多い海域から少ない海域へ移してはどうか。という話になった。
結果、20mくらい先に集めたウニをまた海に返しているらしいのです。ウニって歩くの知らないのかな。
現場の海をよく知っている漁師さんやダイバーと、良い関係の自治体とそうでない自治体ではその海の環境がまるで違います。
人間関係で環境が変わるのはなんとも言えないことではありますが。
話がそれました。
ま、ヒトと棘皮動物の間には色々あるということですね。
薮崎が目撃したオニヒトデの大量発生は翌年には収束しました。
その後、各地で研究は進みます。
【なぜ大量発生が起こるか】
2008~2014年の間に72万6896匹が駆除されました。
7年の間、1時間に12匹駆除されてるくらいの計算ですね。
「駆除は必要か?」
薮崎のスタート地点はここです。
草刈りしなくても冬になれば雑草は枯れます。
皆さんはどう思いますか?
なぜ、大量発生は起こるのか?
有力な説は、「人間活動による海の富栄養化によって、オニヒトデの幼体が淘汰されず、元気にすくすく育ってしまったから」で落ち着いているようです。
よくあるパターンですね。生活を見直してもっと自然を大事にしよう!っていう。
でも「真実は、いつも一つ!」が通用しないのが自然と思っています。
理由の一つではあるんでしょうが、理由の全てではないということ。
大量発生の原因を人間側の切り口でなく、オニヒトデの生態側の切り口から考えたいと思います。
オニヒトデ、コーラルトライアングル 、黒潮にグレートバリアリーフ。
次回は世界を巻き込んだ内容でお届けです。
あ、
もしも庭にオニヒトデがいたら即・駆除します。
子供が触ったら危ないですからね。
つづく。